JARA(日本アーキテクチュラル・レンダラーズ協会)主催の2010年JARA大賞『美術館・博物館建築を描く』への出品作品です。

提供図面部門での優秀賞をいただきました。大賞に続く第2位の賞ですのでたいへん嬉しく思います。
課題として選んだのは内藤廣氏設計による『島根県芸術文化センター』。島根県益田市に建つ大きな芸術施設です。
       
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まずは作図から
私は普段からコンピュータによるモデリングは使用しておりませんので、昔からの透視図法による手作業で作図します。
図法は足線法と云う基本中の基本。透視図法にはいくつもの方法があると良く云われますが、基本概念は一つです。
私も足線法と書いてはいますが作画途中でいろいろな図法を取り入れることで少しでも作業効率をあげることを考えながら起こしています。

手作業による作図でも、コンピュータソフトによるモデリングでもアングルをどう決めるかが最終的な作品の仕上がりに大きな影響を与えます。
今回は既存物を描くので、どうせなら普通人間の目で観る事の出来ない鳥瞰アングルにトライしてみることにしました。透視図と云う技法ならではの表現にしなければ意味が無いと思ってのことでもあります。
こうしたコンペでは数多くの作品が並べられ審査される訳ですので鳥瞰図はインパクトに欠け不利であると私は考えましたが、普段から鳥瞰作成を多く手掛けている身としては、あえてチャレンジしてみたかったのです。

さて、鳥瞰アングルと云うのは一般的に作図の歪みが多く現れ易いものです。アイレベルによるアングルは屋根面が見えませんからほとんどは2面の垂直面(カベ)による表現で済みます。
鳥瞰図においては屋根面あるいは周辺の地形が明確に描かれ、無理な視点を想定すればそこに透視図法による歪みがはっきりと表れてきます。
安定したアングルを得るには思い切って見るポイントを遠くすることです。あまり迫力とか云う言葉に惑わされないよう注意が必要です。結果永く観ていても飽きが来ない構図を得ることが出来ます。
対象建物がおおよそ30度前後の画角に納めるのが一つの指標となるでしょう。
一般にこの辺りの判断に無理のある鳥瞰図(特にCG)をよく見かけます。
クライアントが良いといったアングルがベスト ではなく、それを翻すことが出来る、説得出来る、技術的論理的根拠を身に付けたいものです。


下猫ラフ画を元にトレースした本番用の下絵を描きます。この線画は著彩する用紙に転写するので、できるだけ細かく正確に描いておく必要があります。
鉛筆で描き込んだあとデジタルに取り込みタイルの目地を入れます。一般の仕事で常にこういう行程を行う訳ではありませんが、今回は建築の規模と描く大きさを考慮し目地のみデジタル上の処理としました。
それを落とし込んだ下絵が上の画像です。この線画は後に色を塗った画像の上に重ねますので画像ファイルとして保存しておきます。まずは極めて薄くしたものを著彩用紙にプリントします。
用紙を水貼りしていざ著彩。塗り上がったら再びスキャナーで取り込んで調整作業です。樹木は水彩で描いたものを切り取りデジタル上で重ねています。車、人はも同じです。
車と人は応募作品には描き込んでいませんでしたので、今回ここに載せるために描き込みました。すべて手で描いたものかPHOTOSHOP上でタブレットで描いたものです。
3dモデリングはどこまでも無しの世界です。


内藤先生の『島根県芸術文化センター』は石州瓦という朱色の瓦でカベも屋根も覆われています。今回この建物を描くと決めた時に赤一色で描こうと思い制作に入りました。
しかしながら私の画力不足でやはり単色で描き切ることが出来ず、弱くではありますが他色を用いることになりました。
それから、この規模の建物は手描きで描くのであればやはり最小でもA2サイズは必要のようです。私の持つプリンターがA3ノビまででしたので今回は着彩に用いた絵は横45cm程度となりました。



最後に少しディテイルを観ていただくためにズームアップした画像を載せておきます。
瓦の目地は色を載せた時にかなり潰れますので、後から上に掲載しました線画を弱く載せ直します。

以上、最後までお読みいただき感謝申し上げます。 使用画材:鉛筆、透明水彩、albireo水彩紙 & PHOTOSHOP

やはり良いパースを描くには良い題材が必要とかねてから思っていたことを再認識いたしました。
素晴らしい設計は絵になります。


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